アート・コレクティブ「パープルーム」の主宰として知られる梅津庸一。その制作活動はコロナ禍以降、版画や陶芸に留まらず、素描、陶板、室内デザイン、風炉先屏風など、多様なメディアを横断しています。本展は、新作を含む40余点を展示いたします。

《夜の花粉》
2023〜2025年
エッチング
56.9×52.4 cm

《モダンな壁紙》
2023〜2025年
エッチング
56.9×52.4 cm

《微光と雨音の社》
2024年
陶
13.3×14.6×11.5 cm

《衛星都市》
2024年
陶
9.7×30.5×29.4 cm

《未然の》
2023年
水彩、アクリル、油彩、紙
60.7×94 cm

《モダンな壁紙》
2022年
水彩、アクリル、紙
115.5×130 cm
梅津庸一/Umetsu Yoichi
1982年山形生まれ。美術家、アーティストコレクティブ「パープルーム」主宰。東京造形大学絵画科卒業後、日本の近代洋画の黎明期の作品を自らに憑依させた自画像をはじめとする絵画作品を発表し注目を集める。その後、私塾「パープルーム予備校」(2014年〜)や自身が主宰する「パープルームギャラリー」の運営、テキストの執筆のほか、近年は陶芸や版画に表現領域を拡大するなど、その活動は多岐にわたる。主な個展に「梅津庸一|クリスタルパレス」国立国際美術館(2024年)、「梅津庸一|ポリネーター」ワタリウム美術館(2021年)など。
ギャラリーの名称である「A/D」はアート&デザインのことである。かつて、絵画や彫刻など独立した芸術作品を「純粋美術」と呼んだのに対し「応用美術」は実用品に装飾的デザインや美的なフレーバーを付与した、一段下のものと見做された。
しかしそれは過去の話で、今や多くの「現代アート」はライフスタイルを演出するためのグッズと化している。僕はそんな現状を良いとも悪いとも思っていない。少なくともそんな状況下でも各々が探究心を失わずに作り、熱心な観客を得ることはできるはずだから。
本展では僕がコロナ禍以降、集中的に取り組んできた版画や陶芸の仕事を中心に紹介する。いずれも印刷産業や製陶業という工房の原理を芸術に転用したものである。またそれぞれのメディアで得た知見を横断的に異なる形式に応用し螺旋を描くように作品を展開していく。どの作品も実用性の乏しいものばかりだが、近年ではBARの内装デザインなど調度品としての作品の域を超えた試みにも着手しつつある。
その意味で本展に並ぶ作品群は準応用美術と呼べるかもしれない。つまり「純粋性」と「実用性」の両方が不徹底であることによって生まれる余剰にこそ今の僕の仕事場があるのだと。
梅津庸一