中風森滋「歩く赤るみの女王」

2025.11.21(金)~ 12.7(日)

中風森滋は、重なり合う線とキャラクターを通して、人の内面に潜む感情の揺らぎを描き出すアーティストです。
落書きのように始まる線の集積は、次第に形を成し、どこか不完全で不安定な存在としてキャンバス上に現れます。
中風がこれまで追い続けてきた「描くことの内的必然」と「線の呼吸」は、本展においてより深い層へと進化を遂げています。

私は世の中の情報量や早さについていけず、想像力もうまく働かない。ささやかでも自分なりの生きている実感を得るために、漫画のキャラクターのような線の絵を描き続けている。
情報過多な今の状況は、思うに過剰な明るさが関係している。昔話の中では、火を灯して対象を「見る」ことで物語に進展が起きたりするが、現実でも、スマホなどの人工的な光で照らすことで、詳細な情報が見えるようになり、様々な事象が明るみになる。
明るさ、引いては火というエレメントが状況の活性化に重要な役割を果たしている。
絵を描くこともある意味、見えないものを明らかにする行為と言える。ただし私は、明るさを通じて、情報を詳らかにするものではなく、生を実感するために、自身の内面や感覚という暗い面に着目した表現を行いたい。
私は幼い頃からキャラクターを線で描いてきたため、手がキャラクターの線を覚えている。画面上で生まれる、交差した線の形は、キャラクターであると同時に、抽象的な形でもある。その曖昧さの中に、私自身の感覚や記憶が確かに働いているように感じる。
明るみになることに暇がない今の状況に対して、そのような暗さを通じて、少しでも生きているということを感じたい。

中風森滋


中風森滋《歩く赤るみの女王のための暗い火》
中風森滋
《歩く赤るみの女王のための暗い火》
2025年
油彩、キャンバス
72.7×91×3 cm
中風森滋《歩く赤るみの女王のための暗い火》
中風森滋
《歩く赤るみの女王のための暗い火》
2025年
油彩、キャンバス
72.7×91×3 cm
中風森滋《鶯》
中風森滋
《鶯》
2025年
油彩、キャンバス
41×31.8×3 cm
中風森滋《imago》
中風森滋
《imago》
2025年
油彩、キャンバス
91×116.7×3 cm
中風森滋《ニンフに学ぶ》
中風森滋
《ニンフに学ぶ》
2025年
油彩、キャンバス
41×31.8×3 cm
中風森滋《赤と黄色の中空》
中風森滋
《赤と黄色の中空》
2025年
油彩、キャンバス
72.7×60.6×3 cm

中風森滋/Nakakaze Shinji

1994年千葉県松戸市生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科卒業。キャンバスにキャラクターを描くアーティストである。彼は、行き詰まった状況や周囲にあふれる情報に混乱し、線のように絡まって停滞している思考を、キャラクターのらくがきによって解きほぐすように画面上に解放する。そこから始まり、頭の中にある幾重にも重なる線から具体的な形を成していく。そして、その線を拾い上げ紙からキャンバスへと移し、キャラクターに息吹を吹き込むのだ。ふわふわと広がった絵具は重力や世界のルールを軽視し、現代で心地よく呼吸できる場所を作る。

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