市川孝典「murmur」

2022.5.27(金)~ 6.19(日)

うつろい消えていくような儚げな記憶の中にある風景をモチーフに制作を続けている市川孝典。
作家自身が過去に体験した朧げな記憶、煙に包まれたようなイメージは温度や太さの異なる線香を使い分け、紙を焦がすことで描かれます。
「murmur」と題された本展では、4枚組の大型作品を含む新作13点を展示いたします。

森、移動遊園地、葉っぱ、枯蔦。
懐中電灯の光の中彷徨い歩いた森、私の頭の中で常に変化をして広がっては消える記憶の中の森。
目の端っこで何気なくみていた街路樹や壁を這う蔦。どこでみたかも思い出せない枯蔦は私に無意識に潜在する儚く朧げな記憶を纏いながら伸び続け、広がり続ける。
そして、消え続けている。
記憶の片隅に残る移動遊園地の俯瞰。
本当に私がみて体験したものなのか、映画や本、小説、テレビや音楽などで感じたことが、あたかも自分が経験したつもりになっているものなのか、今はもうごちゃごちゃで、分からない。
記憶の断片が消えていくのをなぞるように紙を焼き焦がし、壊しながら、同じ状況、同じ場所、同じ時間の出来事を繰り返し繰り返し描いている。
私の時間の経過だけが、イメージに取り残される。

市川孝典


《untitled (carnival rides)》
《untitled (carnival rides)》
2022年
木製パネル、和紙に焦げ跡
75×100 cm
《untitled (flower)》
《untitled (flower)》
2022年
和紙に焦げ跡
60×60 cm
《untitled (ivy)》
《untitled (ivy)》
2022年
和紙に焦げ跡
55×75 cm

© Kosuke Ichikawa/Soni. & Co. All Rights Reserved.


市川孝典/Ichikawa Kosuke

日本生まれ。現代美術家。
13歳の時に、鳶職で貯めたお金をもって、あてもなく単独でニューヨークへ渡る。
アメリカやヨーロッパ各地を遍歴する間に、絵画に出会い、後、様々な表現方法を用いて、独学で作品制作に取り組む。また、音楽や映像など表現の場を変えながら各界の奇才たちとの交流を通して、活動や表現方法の幅を広げていく。
帰国後、線香の微かな火をつかって絵を仕立てる新しいスタイルで発表した作品は、「現代絵画をまったく異なる方向に大きく旋回させた<線香画>」と称され、メディアに大きく取り上げられる。
現在は、60種類以上の線香を、温度や太さなどで使い分け、一切の下書きなしに少しずつ紙を焦がしながら絵を描いている。
その類まれなる体験をした少年期のうすれゆく記憶をもとに、線香の微かな火の焦げ跡で仕立てられる作品は、国内外で熱い注目を浴びている。

個展

2011年
「FLOWERS」NADiff Gallery、東京
2012年
「frozen」SPROUT Curation、東京
2013年
「CLOCK MOVEMENT WATCH」NADiff Gallery、東京
2017年
「grace note」ES gallery、東京
2018年
「Hello, stranger!」POST、東京
2019年
「ODDS & SODS」BOOKMARC、東京
基本情報
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