この世界に存在する愛らしさと不気味さ、生と死という言語的に相反するそれらの調和をテーマに制作を続けている江口綾音。
彩度の高い色彩で描かれる彼女の絵画には、クマの「ぬいぐるみ」のような可愛らしい生き物、カラフルなキノコなど空想世界のような不思議な風景が描かれています。しかしその細部には彼らの血肉が表現され、描かれるその世界はまさに私たちの生きる矛盾に溢れた世界と同じであると気づかされます。
画面上の絵具の表皮、隆起や躍動、艶やかに光をかかえる被膜が私たちの視覚を鮮やかに魅了することでしょう。
《春のハニワ馬》
2025年
油彩、キャンバス
24.2×33.3 cm
《猫の布団》
2025年
油彩、キャンバス
42.2×42.3 cm
《瑠璃虎の尾》
2025年
油彩、キャンバス
24.2×33.3 cm
《桜の薄掛け布団》
2026年
油彩、キャンバス
24.4×33.5 cm
江口綾音/Eguchi Ayane
1985年 北海道生まれ。2011年金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科修士課程油画コース修了。同年「KANABIクリエイティブ賞2010」修了制作の部で審査員特別賞を受賞。以降国内外を問わずグループ展、個展を開催し人気を博している。
一見可愛らしいキャラクターが存在する空想世界に見えるが、その細部には血肉など不気味さ、暴力性が見え隠れしている矛盾と調和をキャンバスに表現している。
主な個展に「糖衣の風景」(2023年、Hiro Hiro Art Space、台湾)や「絵具のコスモス」(2025年、ミヅマアートギャラリー、東京)などがある、また2024年に開催された「ART OF MIKU」(PARCO MUSEUM TOKYO、東京)にも参加した。



「春眠」と聞けばその後に「暁を覚えず」と諳んじることのできる人のなんと多いことか。大昔の漢詩の一文がこんなにも浸透しているのは、この一文に皆が並々ならぬ共感を覚えたからなのではないかと思っている。
眠りから醒める時、自分が眠る前の自分の延長線上にあることは疑いようの無いこととして自然に受け入れているが、面白い夢や怖い夢を見たりすると、たまに眠る前の自分と起きた後の自分が本当に同じものなのかと不思議に思うことがある。
眠りは小さな死かもしれない。そして、その度に新しく生まれ変わっているのかも。
眠りに感じる心地良さ、奇妙さ、抗えなさ。そういうものを春のうららと共に讃える絵達になった。
江口綾音